人気ブログランキング | 話題のタグを見る

AiRE DESIGN STUDIO

震災を伝える/一人のボランティアの視点から01

3月11日の震災から3ヶ月を迎えた。
自分を振り返れば、ボランティアの生活から東京の日常生活に戻って一ヶ月が経とうとしている。

4月半ばから5月半ばまで宮城県で関わったボランティア。

その中で感じた事を書きたいと思っていた。
でも、中々パソコンの前に向かうことができなかった。

現地で多くの現実を知り、考えさせられた。
感じることが余りにも大きすぎて、自分の中でうまく捉え、消化することができなかった。
それらを表現することができなかった。適切な言葉を見つける事ができなかった。

今でも友達や知人から「ボランティアどうだった?」と聞かれることが多い。
しかしその度に説明に窮してしまう自分がいた。
どこから話して言いのか分からなかった。どう伝えれば良いのか掴めなかった。

そんなごちゃまぜの気持ちの中で、気づいた事がある。
それこそがリアルな感情なのだと。

無理に話にストーリーを付けることは無い、まとめることは無い、ごちゃまぜで複雑な気持ちこそ自分が感じた全てなのだと。

だから今、パソコンに向かっている。

感じた一つ一つの事たちを気持ちを、ありのままに書くこと。伝えること。

被災地を体験した一人として、一番にできる事は伝えることだから。
経験を伝え、共有し、考えるきっかけを与えること。
震災での経験を時間の中で風化させず、いつまでも当事者意識を持ち続けること。


********************************************



被災地でまず痛感させられたのは被害の広大さだった。あまりにも広すぎる、被害を受けた地域。
ニュースで見てきた被災地のシーン。モニターに映る、被害があった場所を示す地図。

現場に立ってみると、ニュースで見ていた様相はとても断片的な物なのだったと気づかされた。

道の脇に積み上げられた風景の残骸。どこまでも続く崩された町並み。圧倒的な景色。
言葉が出ない。それらの悲惨な光景を目の前にしても、信じることができないアンリアルな光景。
とてもカメラを向ける気になれなかった。

一つ道を変えれば高台にある建物は昔と変わらず残っていて、日常の生活と非日常の様相が同居している感覚。

車を走らせれば、流されたところと建物が残っているところ、それぞれが地形の高低に伴って交互に現れてくる。どこも瓦礫で埋め尽くされていた。

「瓦礫」と一言で言ってしまうのは簡単だけれども、そこに含まれるのはどこから流れついたかも分からない個々の家具だったり、家を支えてきた柱の一部だったり、むき出しになった電柱の鉄筋だったり、ひっくり返った車だったり、衣服だったり、漁業の網や浮きだったり、子供の靴だったり、その一つ一つに記憶を宿すもの達だった。

例えばその靴の一つから、この子は無事だったのだろうかと考える。
震災から月日が経ち、それでも片付けられてきた瓦礫の山の中、今自分が立っている場所で亡くなった方もいたのだろうと追悼の気持ちを持ち、祈る。

自分が住んでいた家で何かを探したりしたり、祈り、悲しい面持ちをされている人々の傍らで、ボランティアとは言えこの地に部外者としていることにある罪悪感を感じることもあった。


******************************************

におい。これはニュースでは伝えることができない要素の一つだ。
被害を受けた地域に入ると風景が一気に変わるのだが、独特な臭いが鼻をつく。

それは重油のようなものだったり、潮の臭い、そして魚加工工場から流れ出した魚が腐った臭いだ。車の中でも感じられ、一日いると頭が痛くなるほどだ。埃や粉塵もあり、マスクは欠かせない。

自分が片付けのお手伝いに行かせて頂いた気仙沼のお宅にも工場から数百匹の魚が波と共に入り込み、とても強い臭いとして残っていた。家主さんは2、3年はこの臭いが残るだろうと言っていた。

今被災地では30度を越す夏日になっている。現地にいる友人の情報では、排水溝などにたまった海水などが腐り出す時期になるため、感染症などの懸念があるということだ。
梅雨入りもしたし、雨が多い季節。

被災地はどこも地盤沈下し、また水はけが悪くなっているから冠水しているところも多いはずだ。時間帯によっては冠水で道が通れない所もあった。

しかし、被災地に入った僕がまず現地で勇気付けられたのは、そんな厳しい環境の中で活動している人々がいるということだった。
ガレキを撤去し、電信柱を一本一本たて、信号が無い中交通整理をする。地元の人だけじゃなく、多くのボランティアの姿を見かけた。自衛隊の人々の姿は頼もしく、子供達と笑顔で触れ合ってる姿を見ると、皆同じ気持ちでこの場所にいるんだなと思った。


町は流されてしまったが、そこには確かに町の、人々の鼓動を感じた。




・・・続く


―TAKU―














―TAKU―
by goro0124 | 2011-06-13 23:27 | etc