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項羽と劉邦

『項羽と劉邦』 司馬遼太郎著、新潮文庫。上・中・下巻。



紀元前約200年年頃、中国大陸。秦の始皇帝の強すぎる法治国家は各地で歪を生み、各地で反乱が起こる。
その中で立ち上がるのが楚の項羽と漢の劉邦である。(※楚、漢は国名)
秦は滅び、楚・漢が大陸を半分にして天下を争う。
類まれなる武力とカリスマ性を誇る楚の項羽。一方、田舎のごろつきであった身から、その人徳ゆえに人々に押し上げられる劉邦。


圧倒的な力を持つ前に臆病な劉邦は100戦100負と言うぐらいに負け続ける。しかし、彼の元には才気まれなる武将が集まり、劉邦を支えていく。項羽は己のあまりの強さを頼るばかり、人心は離れていく。

結果として劉邦は項羽を下し、中国大陸の統一を果たすのだが、そこには天命とも言える大きな力を感じざるを得ない。

小説の中で、田舎のちんぴらであった劉邦に国を統一する意思はほとんど無かったと言える。しかし、人の意見を良く聞き、取り入れるという単純だが大きな寛大さの中で張良、韓信らと言った知の天才が劉邦を国取りへと導いていく。劉邦は項羽ほどのカリスマ性や将軍としての能力は無くとも、人を魅了する天性の気質を持っていた。その気質一つが彼を統一へと導いたとも言える

話の中で劉邦に見出された韓信は劉邦軍の中で圧倒的な立場を確立し、一時は劉邦その人、項羽よりも大きな力を持つにいたる。しかし、軍事の天才である韓信には天下を手中に収めるような野望はなく、己の才知を発揮できる場があれば良かった。それが劉邦という大きな器であった。

人にはそれぞれ才能があるが、それらが時代・時勢と呼応し、大きな事を成していく。

自分の才能とは何か、それはこの世の中でどのような価値を持っているのか、思わず考えてしまう。

余談だが、項羽と劉邦の争いの中で、“背水の陣”“四面楚歌”などの現代にも残る故事がでてきて興味深い。
by goro0124 | 2008-12-19 11:33 |